私はメーカー系の企業を親会社に持つSIerの企業に新卒で入社しました。相応には名の知れた企業で会社規模も大きく、お客様先から元請けとして仕事を受注する力を持っていました。
部署により文化の違いはありましたが、ほとんどの部署は自らがお客様先を開拓して、売上を立てることを求められました。
従って、上流工程から下流工程の一通りの経験をした上で、プロジェクトを牽引していけるように成長することは仕事を直接請け負える会社の社員として当然求められました。
私が入社6年目の頃、半導体製品を扱う販売会社数社をお客様とした販売管理システムの仕事を受注することが出来ました。
既に現行の販売管理システムはホストで稼働していたのですが、自社で開発するパッケージシステムを用いて、Webシステムに再構築するというプロジェクトになりました。
私は入社6年目でしたが、現行システムの運用・開発に入社2年目から携わっていましたので、同プロジェクトに参画することになりました。
この記事の目次
私がプロジェクトリーダになった理由は?
私は現行システムを数年間経験しており、販売管理の業務知識も一定程度理解して身に付けており、お客様にも顔を知ってもらっていました。また私はお客様調整や折衝などのコミュニケーション能力に自信を持っている方でした。
複数のお客様が相乗りすることになるプロジェクトであり、自社のパッケージを用いるということからも、内外のステークホルダとの頻繁なコミュニケーションを必要とすると考えられたため、私がプロジェクトリーダに抜擢されました。
プロジェクトリーダで得られたこと
当プロジェクトでリーダとして経験したことは、現在の私の強みを伸ばすという意味においては貴重な経験となりました。自社内のパッケージを用いたシステム開発なのでパッケージ製造部署の社員とコミュニケーションを取りながら、複数のお客様全てのニーズを満たす必要があります。
しかし、費用対効果の観点で各お客様毎の個別対応は出来ないため、あらゆる折衝と調整を重ねながら予算と期限を守れるように要件定義を進めました。
このプロジェクトで私はリーダとしてお客様の矢面に立つことになり、業務要件とシステム要件の双方をバランス良く理解しながら、お客様に納得頂ける折衝のコツをつかめるようになりました。
プロジェクトリーダで苦労したこと
私はこのプロジェクトで様々な苦労をしました。最も深刻で絶大なストレスを受けたのが人間関係です。全く仕事をしない上司が形式上はプロジェクトマネージャとなりました。
マネージャたる責務を何も果たさず、部下である私に丸投げをする姿勢に私は深刻な怒りを覚えました。
また、パッケージ開発をする部署のメンバーの複数名が一癖も二癖もあり、プロジェクトがうまく回らなくなり出すとメールのやり取り一つで誤解され、怒りを買ってしまいました。
さらには極めて優秀なキーマンの後輩も私に対して思うところが有ったようで、良好な関係が築けませんでした。
このプロジェクトは品質と期限を確保するために、メンバーが盾になって働き続けねばならない状況が続き、平日は常に22時過ぎの退社が当たり前で、電車で帰って来れば11時30分にはなっています。土曜日の休日出勤も一年以上近く続き、日曜日は疲れ切って寝ているだけ、という生活が続きました。
従事するメンバーは皆疲弊し、家庭とのバランスが取れないこともあり、気が立っていました。
私はプロジェクトリーダであるにも関わらず、社内では四面楚歌に近いような状況になり、唯一の救いはお客様からは比較的良好な関係を継続できたことのみでした。
転職動機と人間関係の関係性は?
このプロジェクトはやりがいがある面もありましたが、深刻な人間関係の悪化で転職を本気で考える契機にもなりました。
必死の思いで納期を守り、リリースから数ケ月してようやく落ち着いた頃、道を探るべくリクルートエージェントなどの転職を斡旋する企業に相談に出向きました。私が転職活動に動き出したのは強い心身のストレスが影響しています。
転職動機を考えてみると、人間関係は主因ではありません。人間関係が上手くいかなったことは間違いなくストレスの一因ではありましたが、私が転職を決断したのは、休日出勤を一年近くもするような状況でも、会社が従業員を守るような風土が無く、常態化する長時間労働に深刻なストレスを募らせたためです。
私はこのプロジェクトに従事している期間中、仕事以外の記憶が全くありません。プライベートでなにをやっていたのか、全く覚えて居ないのです。それほどまでに披露していたということなのでしょう。
近年、ブラック企業が明るみに出て目立つようになりましたが、そこで自殺された方も報道されているだけでも結構な数います。その方々がなぜ自殺してしまうのか?
健常者からしたら「自殺する前に辞めればいいだけじゃん。」と思われるでしょう。
ですが、現実は違います。
寝る時間すら満足に寝られないため、仕事をするという責任感のみが体を突き動かすように変わっていきます。でなければ、給料がもらえず生活できないからです。
最初はその責任感で動きますが、その状態が続き、数ヶ月もすればなぜ自分が苦しみながら仕事をしているのか忘れていき、この苦しみがずっと続くくらいなら死んだ方がまし。といった思考になり始めます。
実際に私も近い精神状態にありました。まさか、私が仕事でここまで苦しめられるなんて思ってもいなかったため、家族に「あんた、なんでそんなに必死に仕事いこうとしてるの?」といわれるまで気がつけませんでした。
こんな精神状態になってきた時、逆に会社の全てに怒りを持つようになってきていました。自らの裁量で働き方を選択出来ず、土日に出社してこない上司に怒りを覚えてきたり。
また、そんな自分自身の精神性に自己嫌悪し、転職を決断するに至りました。
私が自殺せずにちゃんと転職を決断できたのは家族の指摘があったからだといまでは思いますので自分を仕事とは関係ない視点で客観的に見れる存在である家族って重要なんだなと感じます。
また、会社での人間関係が上手く行かなかったのは私自身の振る舞いが鏡のように映し出された結果でもあると、今では自覚しています。
同じように転職しようかの環境で悩んでいる方へ
私は前職で丸9年間勤め、今はユーザ系のシステム開発会社に転職して同じくらいの年月が経過します。転職後も色々と苦労しています。
帰りが遅くなることがありますし、会社の文化や人間関係に馴染むのにも一苦労しました。結局人間関係は前職でも今の会社でも苦労しています。
あまり戦力になれずに悩んだ時期もあります。年収の額面自体も前職のSIerの企業にいた時の方が高かったかもしれません。前職SIerの企業ほどのやりがいも得られません。それでも転職して良かったと心から思っています。
私にとっては最も強い転職の動機であった長時間労働が緩和され、自身の裁量で働けることが格段に増えたからです。また企業風土が休暇取得を推進しています。その企業風土を私は尊敬し、会社に感謝することが出来ていますし、これからもここで働きたいと思えているのが一番大きいです。
私にとって最も大切なことが改善されたので、それだけで転職は成功だったと思います。転職を志す方には是非ともご自身が最も大切にすることを見極めてから動いて頂きたいです。
また、転職後の環境がご自身の大切にすることを改善することにつなげられることが出来るのか見極めて頂きたいと思います。転職にはリスクがあると言われます。
しかし、ご自身が転職して良かった、と心から思えれば、それがあなたにとって大成功なのです。良かったと思える理由は人それぞれですから。例えば、休暇が多くなったからとか、給料が増えたからとか。
私の記したことは所詮私にとっての世界観に過ぎませんし、私にとってのメリットとなります。
何でも満たされるような環境は存在しませんし、そもそもが良い環境かどうかは結局のところ、ご自身の気持ちに宿るものです。私の転職した経験や口コミなどが少しばかりのヒントになれれば幸いです。